帝京大学 本部情報センター 特命課長 大津 信弘氏 |
【導入先プロフィール】組織名:帝京大学所在地:東京都板橋区加賀2-11-1 創立:1966年 事業概要:創立以来、建学の精神として、「実学」、「国際性」、「開放性」教育指針として掲げる。現在は10学部32学科10研究科(2専門職大学院)、学部学生数2万3千人を擁する総合大学となっている。 URL:https://www.teikyo-u.ac.jp/ |
【導入の背景】各キャンパスがそれぞれ管理している情報を集約したい
実践を通して理論的な思考を身につける「実学」、異文化理解の学習・体験をする「国際性」、必要な知識・技術を偏ることなく幅広く学ぶ「開放性」を教育指針として捧げ、多くの優れた人材を社会に送り出してきたのが帝京大学です。医学部を含む10の学部を有し、約2万人の学生が在籍している国内有数の総合大学であり、イギリスのタイムズが公表する「World University Rankings」において日本の私立大学として最上位に位置するなど、その先進的な教育と数多くの実績は世界でも高く評価されています。
この帝京大学を含め、公立・私立を問わず多くの大学で進められているのが「IR」(Institute Research)と呼ばれる取り組みです。これは教育および研究、経営、財務の情報収集と蓄積、さらには学習成果の調査分析などを行い、その結果に基づいて大学の自己評価や意思決定を進めるという活動です。
帝京大学においてもIRの取り組みは進められていますが、板橋、八王子、宇都宮、福岡、霞ヶ関と多くのキャンパスがあり、それぞれが個別に管理している情報も多かったことから、IRの取り組みを加速させるために必要な情報を十分に集約できていないという側面がありました。この課題を解決するために、日本私立学校振興・共済事業団が行っている「学校法人基礎調査」で提出しているデータを活用することを検討したと話すのは、帝京大学 本部情報センター 特命課長である大津信弘氏です。
「日本私立学校振興・共済事業団での学校法人基礎調査業務では、『e-マネージャ』と呼ばれるシステムを利用してデータを入力します。帝京大学では従来、キャンパスごとにe-マネージャへデータを入力していましたが、その情報を本部で一括入力することにより情報を集約することにしました」
【導入のステップ】費用面からシステム化しづらい業務に対して「WinActor®」を活用
ここで課題となったのは、各キャンパスから収集したExcelファイルに記載された情報を、どのようにe-マネージャに入力するのかというものです。Excelファイルの数は膨大であり、人手で入力していては膨大な手間が発生してしまいます。この課題の解決策として選ばれたのが、NTTアドバンステクノロジが提供する純国産RPAツールである「WinActor®」でした。大津氏が選定理由として挙げたのは、WinActor®のコストパフォーマンスの高さです。
「多くの企業ではさまざまな業務がすでにシステム化されていて、残っているのは費用対効果の面からシステム化しづらい業務です。そうした業務を効率化することを考えたとき、RPAは有効なソリューションだと思いますが、そのRPAに莫大なコストをかけるようでは本末転倒でしょう。その点、WinActor®は競合ツールに比べてはるかに導入しやすい価格で提供されています。またユーザーインターフェイスが分かりやすいなど使い勝手もよく、WinActor®を選択したのはいい判断だったと考えています」
さらに大津氏はWinActor®のメリットとして、業務側の要件が固まっていない状況であっても自動化できる点も大きいと述べます。
「WinActor®で自動化する前に業務フローを作成したのですが、標準化できない業務もあり、すべてをフローに落とし込むことが難しい状況でした。しかし、WinActor®は業務側の要件が多少固まっていなくても柔軟に対応することが可能です。私自身、システムエンジニアとしてシステム開発に携わったこともありますが、今回の件でWinActor®に触れ、RPAはシステム開発の手法を大きく変える可能性があると感じました」
【導入後の成果】短期間での開発にもかかわらず2割以上の業務を削減
学校法人基礎調査業務のデータ入力は、5月末と6月末の2回に分けて行われます。それを自動化するためのWinActor®のシナリオ開発が始まったのは2019年4月半ばで、5月20日ごろから第1回目のデータ投入が始まっています。なお最終的なシナリオ数は約30と膨大であり、極めて厳しいスケジュールではありましたが、WinActor®を利用してExcelに記述されたデータを無事e-マネージャに投入することができました。
大津氏自身、「実は、これはどう考えても終わらないのではないかと考えていた」というシナリオ開発ですが、なぜこれだけ短期間で開発することができたのでしょうか。その理由として、開発を担当した株式会社セラクの担当者は、次のように理由を語りました。
株式会社セラク デジタルトランスフォーメーション本部
RPA部 RPA課 主任 K.H氏
「WinActor®では、標準機能として提供されているパーツを組み合わせてシナリオを開発します。このパーツはすでに検証済みで動作が保証されているため、本来のシステム開発で必要となる単体テストの工数を劇的に削減でき、それによってシナリオ開発の期間を大幅に短縮することができました」
このように短期間でシナリオ開発は完了し、Excelに記述されたデータをe-マネージャに入力する業務をWinActor®で自動化することができました。WinActor®の導入効果について、大津氏は20%以上の業務を削減できたと話します。
「今回、特に大きく業務量を削減できたのは会計系の業務です。Excelで集計するだけで、e-マネージャに入力する部分は自動化が図れたためです。これらの結果を積み上げると、おそらく2割以上の業務量を削減できたのではないかと考えています。またデータさえ用意すれば入力は自動的に行われるため、納期に追われて手入力する必要がなくなったことも導入効果と言えるでしょう」
【今後の展望】 「WinActor®」が備える機能を活用して幅広い業務に展開
シナリオ開発に携わった株式会社セラクのシニアマネージャーは、今回のプロジェクトについて、次のように振り返りました。
株式会社セラク デジタルトランスフォーメーション本部
RPA部 RPA課 シニアマネージャー S.K氏
「RPAは、業務について一定の整理し効果的な使い方を検討した上で作業を進めるという考え方もあれば、現状の業務をRPAツールでトレースし、手っ取り早く成果を生み出すという使い方もできるツールです。今回の帝京大学様の導入事例は後者の成功例で、WinActor®を活用して一定の成果を生み出すことができたと考えています」
現在、帝京大学では、学校法人基礎調査業務に加えて会計課助成係担当部分などでもWinActor®を利用した業務の合理化が進められています。将来的にも、WinActor®が備えている機能を活用し、さまざまな業務に自動化していきたいと大津氏は語りました。
「たとえばWinActor®が持つフォルダー監視の機能を利用して、あらかじめ用意したフォルダーにデータを保存すれば、それを自動的に集計するといったことが可能です。このように提供されている機能を活用し、さまざまな業務にWinActor®を活用していきたいと考えています。また入学シーズンに発生する膨大な業務を自動化し、年間で業務量を平準化するといった用途でもWinActor®は有効ではないかと期待しています」 今後もWinActor®は、業務を合理化するためのツールとして帝京大学の幅広い業務で活用されるのではないでしょうか。
今回のプロジェクトでは、帝京大学様と密に連携してシナリオ作成を進めました。とはいえスケジュール上の理由から自動化できなかった領域もあり、今後もさらなる業務の合理化に向けてサポートさせていただきたいと考えています。
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