「お客様からの注文やお問合せなどのコンタクトチャネルとして、電話、FAX、ハガキ、Eメール、インターネットの5つがあり、これらの対応窓口であるコールセンターでの業務改善のためにRPAの導入を検討しました」と話すのはお客様相談室室長の能勢氏。2018年、業績の悪化と電話件数が年々減少していることから、5拠点あったコールセンターを2拠点に縮小。お客様の使用ツールは多様化しており、これまでのメインであった電話だけでなく、メール、チャットやSNSなどハード面での利便性も顧客満足には欠かせないものと考えました。また電話は苦手という方も増えており、コールセンターの人材確保にも先行きの不安がありました。いつまでも人ありきではなく、システムを活用し、これからのカスタマーサポート体制の整備というのがミッション。しかしコストはかけずに、アイデアで、という難しい課題でした。「ニッセンカスタマーセンター 労働集約型 業務設計からの脱却」というテーマを掲げ、コストパフォーマンスとお客様の利便性(サービスの拡充)をはかること、ソフト面(人的対応)とハード面(システム)の2側面からのお客様満足度向上させることを目標に新たなチャレンジがスタートしました。
コンプライアンス統括部
お客様相談室
企画推進担当 奥村純氏
カスタマーサービス部での2018年の業務量について、前年比で電話とハガキは減少、メールは約2倍増加との予測が出ました。オペレーターが全件、手動で対応していたメール返信を自動化するため、2018年7月よりAI(Bot)とRPAの運用を開始。カスタマーサービス部NETコミュニケーションチーム マネージャーの池田氏は「まずは顧客対応ポリシーを再設計しました。AI(Bot)の対応により、お客様がサイト上ですぐに自己解決されることも顧客満足に繋がります。人でしかできない難しいものは人が対応することで感動体験が生まれるとも考えました」と述べます。
お客様からのお問い合わせにAI(Bot)が対応し、そのやりとりから質問内容を仕分けして、詳細説明のサイトページ、もしくは40数種類のお問合せフォームへ的確に誘導。フォームから届くメールは、メール応対支援システム「MatchMail」によりテキスト分析し、各カテゴリーへ自動仕分けされます。返品、パスワード、退会、請求書再発行など定型で業務ボリュームのある項目はRPAの自動返信、商品の不具合など難しい内容は、人が誠意をもってお客様へ返答します。
RPAはNTTアドバンステクノロジが提供するWinActorを導入。選定理由としては、日本語で比較的簡単に操作やシナリオ作成ができること、低コストであること、10年前から使用している同社の「MatchWeb」「MatchMail」の技術力、信頼性への高い評価が挙げられています。
※「MatchWeb」「MatchMail」はNTTアドバンステクノロジ株式会社の製品です。
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AI(Bot)とWinActorの活用でオペレーターのメール対応数は70%減。例えば、ログインに関するお問合せは、就業時間内の手動返信で半日を要しましたが、自動化により返信までのリードタイムは3分と劇的に改善。スピーディーな対応で顧客満足度が向上し、返答後の注文率が44%から60%、年間で2700万円の受注アップに。また、カタログやメルマガの発信後には問い合わせが急増し、残業や増員をしていましたが、RPAは追加コストゼロで対応可能、受注に対しての問い合わせ比率も8%から4%に低減。対応オペレーター11名分の作業を削減(全体作業の40%の削減)、メールセンターの営業時間も4時間短縮しました。
さらに、ハガキ注文の処理にも自動化を推進。カスタマーサービス部 オペレーションサポートチーム マネージャーの杉山氏は「カタログ発行時は1日最多で2,800枚ものハガキが届き、手入力のため受注完了までのリードタイムが約3日、入力ミスも大きな課題でした。RPAとAI-OCRの導入で解決できるのではないかと考えました」とその理由を語ります。注文ハガキは、まず人が仕分けをし、スキャナで読み込めないもの、読みにくい状態のものは人が対応、それ以外はAI-OCRでテキスト化したデータをRPAで基幹システムに連携することで、ハガキ到着日の入力処理が可能になりました。読み取りの制度を上げるためハガキのレイアウトも見直し、ハガキ注文の約70%を完全自動化しました。
「労働集約型 業務設計からの脱却」の実現に大きく貢献しているWinActor。今後も返品処理の問合せ自動化など、さらなる活用を検討中です。お客様相談室 企画推進担当の奥村氏は「導入部門を拡大し、継続的に運用していくには、その部署でチューニングできる人材を育成する必要があります」と話します。「WinActor導入初期のシナリオは販売店のブレイン・ゲート様に依頼しました。業務内容を理解して、完成度の高いものを作っていただきました。作業過程を見て、私もシナリオ作成やチューニングができるようになりました。RPAは24時間稼働しているので、エラー発生時も迅速に対応できる体制を整えておかなければなりません。また、ハガキのレイアウト、お問合せフォームの形式など、他の要素の見直しにも積極的に取り組んでいます。RPAにより、業務効率化のヒントや工夫を考える機会も増えました」
導入当初、オペレーターからは「ロボットに仕事を取られるのでは」という声があったといいます。しかし、自動化できる業務はRPAに任せることで繁忙期の混乱やミスがなくなり、効率的であることを実感してもらっています。そして、RPAとオペレーターの対応が同じクオリティ、同じ結果になるようにRPAを基準としたことで、人による曖昧な判断がなくなり業務の質も向上しました。今では、大切なスタッフとして共存しており「まだまだ自動化できる業務はあるはず」とさらなる可能性が期待されています。