株式会社ニチレイロジグループ本社 業務革新推進部 部長代理 勝亦 充 氏 |
株式会社ロジスティクス・ネットワーク 経営企画部 マネジャー立岡 伸介 氏 |
ニチレイロジグループでは、以前から労働力不足や働き方改革というテーマで取り組んでおり、事務業務の軽減は中心施策の一つです。当初は自動化ツールとしてExcelやAccessを活用してきましたが、これらのツールは担当者個人の知識やノウハウに依存し、内容がブラックボックス化しやすいため、継承したり他部門に展開していくことが困難でした。
この回答として、早い時期から属人化したノウハウを形式化できるRPAツールに着目し、特定の事業所で試用を開始しました。その結果、業務量削減やノウハウの見える化などの具体的な成果も上がったことから、全グループの施策として、各社への水平展開を計画しました。しかし、現場では従来の「自動化」へのマイナスイメージが残っており、思うように展開が進まず、このイメージを払拭するための活動が必要でした。
また、自分たちの業務は部署名の通り「業務改革を推進すること」がメインです。仮に全国各地にある事業所やグループ会社に取り組みを展開できたとしても、現在の自社リソースだけでは、RPA利用者のサポートまで手が回らないことが明らかでした。普及後の姿をイメージすると、出張やオンサイト対応等での融通が効いて、技術面でのサポートを担当できるリソースをどのように確保するかが、もう一つの課題でした。
RPAの全社展開を成功させるためには、「全員が当事者」という意識を持ってもらうこと必要だと考えました。そこでまず、RPAの概要やトライアル期における成果を社員がイメージしやすいように、身近な社内システムの事例動画で解説し、自動化が社員一人ひとりに役立つことを伝え、RPAの「我がこと化」を図りました。また、普及の考え方も、早急に「数字の成果」を求めるのではなく、「まずRPAに馴染む段階」と「実際に業務を改善して成果を出す段階」の2ステップにわけて考えることで、じっくりと浸透させていきました。
始めのうちは「普及期」と位置づけ、本社主導で50回にも上る「業革セミナー」を各地で開催、これまでに700名を超える社員が参加しました。さらに、女性社員限定で企画した「RPA開発合宿(2泊3日)」には各地から40名が参加し、一気に各事業所におけるシナリオ作成意欲が高まりました。ほかにも、グループの社長や支店長をはじめとする経営層の理解を得るために丁寧な説明を行い、各事業所の担当者が孤立しないよう、RPAを積極的に利用できる環境づくりにも注力しました。
しかし、これらの普及活動の中心的な役割になる事務局は、5名程度のリソースしかありません。この人数で、ナレッジの蓄積、管理ツールやガイドラインの構築、教育担当者の育成など、推進体制をどう整えていくか様々な問題点にぶつかりました。また、全国各地にグループ企業・事業所があることから、出張対応ができることも必須です。派遣等では難しい内容ですが、これらの条件をすべてクリアできるパートナーに協力いただけたことは、成功の秘訣の1つです。
普及活動が実を結び、本格利用開始から約1年でニチレイロジグループの12社94事業所において、計100前後の自動化シナリオが稼働しています。時間に換算すると、年間10,000時間の業務時間が削減できている試算です。今後は、シナリオ構築ができる人材を100名程度まで育成し、グループ全体で180,000時間の削減を目標にし、削減した時間を「より価値の高い仕事」や「積極的な休養」に当てていきたいと考えています。
時間の削減だけでなく、社員自らが「業務は変えることができる」「次はこうやってみよう」と考え始めることで、今までは当然だった業務を「いい方向に変えよう」とするマインドが生まれ、事業所内におけるコミュニケーションの活性化にもつながっています。また、他事業部や他社の事例を共有することで、「自分の部署でも利用できそう」と考えてもらえるようになり、RPAを活用して業務を改善しようという機運が自然と高まっています。
普及した自動化ツールを長く利用していくためには、RPAの管理やアフターフォローも大切な要素と考え、事務局でクラウド上でRPA管理台帳を作成しました。RPAの利用には、台帳への登録(内容、シナリオ、操作動画)を必須とし、グループ内で情報共有できる状況を構築しました。また、各事業部で独自のシナリオを作成する際には、まずは自動化したい業務を動画で共有し、以降は研修・開発支援→作成→アフターフォローという流れを確立することで、運用できる段階まで事務局で支援できるようになっています。
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