情報システム部 第2課
課長
宮川孝義氏
株式会社ビジネスアンカー
代表取締役社長
徳山正秀氏
株式会社ビジネスアンカー
DX事業部 東京グループ
大森貴史氏
現在17部署で業務を支えるWinActor。情報システム部が主導管理を行い、実務は関連会社の株式会社ビジネスアンカー(以下、bac)に委託。ロボット活用が活発になるにつれ、野良ロボット(管理されていないロボット)などによる業務への支障が懸念されました。ロボットの管理を行わない場合、シナリオ改編後、新しいロボットを運用しているつもりが改編前のロボットが動いていたり、引継ぎがされず誰も把握していないロボットが動いていたりすることで、システム障害などにつながる大きなリスクとなります。
そこでクラウドでの集中管理が可能なWinActor Manager on Cloud(以下、WMC)を導入。グループ会社への展開も視野に、業務の効率化、標準化をめざしています。
株式会社ビジネスアンカー
DX事業部 東京グループ
吉原塁氏
2018年に関連子会社の手作業での入力業務の自動化にWinActorを導入、大幅な時間削減効果が得られたことから、2019年より全社的にRPAを主軸としたDXを推進しました。システム開発費用の予算を設定し、bacにて自動化可能な業務のシナリオを作成、また社内でのデモンストレーションやセミナーも実施しました。グループ会社を含め約60名がRPAの基本を学び、その中の約30名がさらに深い知識を習得。各部署2名ほどの有識者を育成し、WinActor専用パソコンで運用する中、社員のITリテラシーが向上し、現場でのシナリオ作成も可能となりました。
現在122件の案件をロボットが実行し、輸入契約の入力、為替管理用決済金額・為替レートの集計、在庫照合など17部署の業務を自動化、年間14,332時間の労働時間を削減。順調な拡大展開で日々の業務を担う一方、シナリオ数の増加による問題点も浮き彫りに。「導入時は、Excelで管理表を作ってライセンスやシナリオの管理を行っていましたが、シナリオ件数が増加していく中で管理が煩雑になり、また稼働実態が把握されない野良ロボットの発生を想定したセキュリティ対策などの課題が出てきました」と話すのは情報システム部第2課課長の宮川氏。管理サービスの採用を半年以上かけて検討し、複数のWinActorをクラウド上で集中管理できるWMCを2019年6月に導入しました。
運用は部署ごとにWinActor専用パソコンを設置し、担当内で共用してロボットを実行していました。WMC導入後は、現場担当者によるWMCからの専用端末操作も検討しましたが、複雑で詳細な設定が可能なWMCを現場で利用することは難しいと考え、WMCのAPIを呼び出してロボットを実行するショートカットを作成し各担当に配布、誰でも簡単にロボットを呼び出せる仕組みとしました。この手法であれば、WMCの仕組みを理解していなくても現場で必要なロボットだけの実行が可能です。
しかし、この運用で問題となったのがシナリオIDの更新でした。保守や改修を行い、シナリオをクラウドに再度アップロードすると、その都度シナリオIDが自動的に変更されます。これはシナリオのバージョンを記録するというWMCの仕様ですが、シナリオIDが変わるとショートカットが機能しなくなります。「クラウド上でシナリオ修正ができても、シナリオIDの自動更新の度に各部署へ出向き、ショートカットを修正しなければならないことが負担でした。シナリオIDの自動更新設定機能の変更、あるいはユーザーインターフェイスを設けて欲しい。機能をしぼったWMCの操作画面があれば、現場で簡単にシナリオが実行できるはず。他の機能は非常に有効であるがゆえ、ぜひとも解決策を検討いただきたいと要望しました」とbac代表取締役社長の徳山氏は、運用面の課題を振り返ります。
WMCの導入によりグループ会社へのWinActorの統合管理が可能になりました。今後、グループ展開を視野に入れ、現在グループ会社である株式会社STXに対してトライアル導入を実施しています。STXにはRPAの知識やスキルを有する人材が少なく、WinActorのキャリアがある情報システム部とbacが協力してサポートしています。STXから研修生を受け入れ、6カ月間の研修でシナリオのアップの仕方、管理のノウハウなどを伝授しました。
研修後、STXに戻り、その社員がWMC導入に主体となって取り組み、保守や管理も担当しています。WMC上でSTXのシナリオなども共有できるようになっており「これは困った」「ちょっと教えて欲しい」という時にはすぐに対応しています。「難しい保守や、スキルや経験不足でできないことは、弊社の経験豊富なメンバーがバックアップしています。困った時の知恵袋のような存在になれると思います。WinActorとWMCでグループ会社への拡大を想定していますが、各社にRPAに精通し、使いこなせるスキルを持つ人が少ないと社内での運用、広がりを作ることは難しいかもしれません。人材育成がグループ展開への課題となるでしょう」とbac・DX事業部東京グループの大森氏は言います。
「管理システムについては、いくつか比較検討をしました。シナリオやライセンス、ロボットの状況などをクラウドで集中管理できることがWMC導入の決め手となりました。これに伴いWinActorについても従来のNL版ではなくフローティング版(以下、FL版)を導入しました」と宮川氏。NL版ではWinActor専用パソコンでのみ実行起動が可能でしたが、FL版では利用する端末が限定されず、WMCによりブラウザ経由で他のパソコンから実行起動が可能となり、同じシナリオを複数の端末から処理できるなど、より有効な活用が可能です。
「運用面ではスケジュール管理機能が非常に役立っています。WMCではロボットの稼働状況を1画面で確認ができ、エラーが起きている、正常に動いているというのが一目でわかります。導入当初に懸念されていた野良ロボットの発生も抑制できています」とbac・DX事業部東京グループの吉原氏は、WMCの最も役立っている機能を挙げます。稼働の管理は各部署の管理者が行っており、例えばエラーが起きた場合は、現場の管理者からbacに保守依頼の連絡が来る、あるいは自動的にメール送信される仕組みになっています。そんな時にも、WMCで状況を見て、改修する必要があるのかないのか、現場まで行くべきか、クラウド上でできるのかということを判断し、迅速な対応につながっています。
現場担当者向けのシンプルな操作画面「シンプルモード」が開発され、WMCの機能として追加されました。運用管理者向けの操作画面とは別に、シナリオ実行のみを利用するユーザー専用の簡易画面から3ステップでシナリオを実行。ログインするとユーザーが使用するシナリオのみがタイル状に表示されており、起動するシナリオを選択、カレンダーから空いている時間を予約、あるいは即時実行をクリックすれば実行可能です。
導入にあたり、大阪と東京で各部署の管理者を対象にシンプルモード説明会を実施しました。シンプルモードはクラウド型なので、自宅や出先からでもそれぞれの端末からアクセスさえできれば実行することができます。これまでは担当者が、WinActor専用パソコンの起動とシナリオ実行のためには必ず出社しなければなりませんでしたが、リモート操作で対応可能になりました。またロボットの稼働状況もわかるので、ロボットの空き状況を現場に確認しなくても、自身の作業の段取りに合わせて即時実行したり、スケジュール登録したりすることが容易に行えます。今は臨時在宅勤務制で出社70%、在宅30%という比率ですが、テレワークにおいてもシンプルモードは利便性を発揮しています。
「今後は蝶理グループ会社へのWinActorの啓蒙とWMCの導入を推進していきます。まずは2024年10月に実施目標の次期基幹システムプロジェクトを最優先で進めています。次期基幹システムSAPとワークフロー intra-martの仕様に対してWinActorと連携して進めたいと思います。基幹システムがグループに展開されれば、業務効率化に寄与するRPAがどんどん増えていくはずです。」と宮川氏はこれからのビジョンを語ります。
「グループ展開のポイントとなる人材育成については、引き続き情報システム部とbacで取り組んでいきます。社内セミナーを受講した社員の中には、WinActorの基礎知識からシナリオ作成の実践に至るまでの知識を有した資格取得者が5名います。こうした知識とスキルをもつ有識者をグループ内で育成していくことが大切だと思います」と徳山氏。WinActorとWMCの有効活用で、蝶理グループ全体の業務効率化と標準化をめざしています。
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