
顧客を多数抱えるBtoB営業組織にとって、どの顧客にいつ、どのような提案をするのか。その精度を高めることは重要なテーマです。RPAツールWinActorの販売代理店であり、生成AIプラットフォームの導入など企業のDX支援を手がける株式会社ブレイン・ゲートプラスも、同じ課題を抱えていました。営業活動の実情を、DX事業部の髙橋氏に伺いました。
髙橋氏「営業担当者は、個々の顧客を訪問する前の資料の作成ができていませんでした。やりたいけれど、資料作成に時間がかかりすぎるからできない。手持ち無沙汰では提案に行きづらい。そういう状況でした」
必要としていたのは、過去の取引の履歴、顧客とのやり取り、そして細分化された自社の販売商品・サービスのうち、いつ何をどれぐらい購入しているのか。それらが一つにまとまった資料でした。
これらの情報は、すべて社内に存在します。ただし、あちこちに散在していていました。全顧客の売上と販売履歴が残る自社開発の「販売管理システム」、購入ライセンス数や契約更新時期を管理する「ライセンス管理表」、顧客からの質問と回答を蓄積した「問い合わせ台帳」。さらには、現在営業管理に使っているツールがあります。しかし、このツールは1年半ほど前に導入したもので、過去の情報がすべて移行されているわけではありません。そのため、それ以前に使っていた旧営業管理ツールに残る履歴も参照する必要がありました。つまり、顧客に関する情報源が5つに分かれていたのです。
こうしたことから、営業担当者が訪問前に確認していたのは、最も見やすい現行の営業管理ツールだけでした。そこに記録されている情報を頭に入れて顧客を訪問し、長く取り引きしていることへの感謝や、前任の担当者が聞いた話題に触れる程度の会話を交わすのが実情でした。
髙橋氏は、「自分が担当したお客様であればある程度わかりますが、古くからのお客様や前任から引き継いだお客様となると、過去の取引履歴が明確ではありませんでした」と打ち明けます。そして、既存顧客へのアップセルやクロスセルを進めていくうえで、欠けていたものが二つあると指摘します。
「お客様に『ちゃんと調べてきてくれている』と感じていただける安心感。そして営業として過去のすべてを知っておくことで、ここは気をつけないといけない、ここはまだ提案のしどころがあるといったヒントやインプットです」
ブレイン・ゲートプラスでは、法人向け生成AIプラットフォーム「JAPAN AI」を2025年8月に導入しました。全社でAIを活用していく方針のもと、AIエージェントで社内の業務を構築していきました。
WinActor以外にもさまざまなツールの導入支援を手がけ、AI研修や活用コンサルティングを通じて顧客にも提案してきた同社には、AIツールに詳しい人材も在籍しています。AIエージェントを活用することで、自社の顧客訪問時の課題を改善できると考え、「営業訪問資料自動生成」のプロジェクトがスタートしました。
ところが、すぐにAIエージェントだけでは解決できないことが判明しました。Web上の公開情報やクラウド上にあるデータであればAIエージェントが参照できますが、自社のローカル環境にあるデータはそれができないのです。同社が利用する営業に関わる5つの情報は、まさにそのローカル環境に蓄積されており、APIによる連携も用意されていません。
髙橋氏は次のように話します。
「AIエージェントにできないこと、それは逆に、RPAであるWinActorが得意とすることでした。RPAは市場に出て時間が経ち、逆に近年登場したAIエージェントですべてが解決できそうな空気も感じられます。ただ、私たちはWinActorを扱ってきた会社だからこそ、『WinActorにしかできないことがある』と気づきました」
では、どこまでをRPAが担い、どこからをAIに任せるのか――。技術開発部の安齋氏は、こう話します。
「決められたルールに従って社内システムにアクセスしデータを抽出するといった、確実性の求められる業務フローはWinActorに任せる。一方、人の考えや分析が必要な部分に関しては、AIエージェントに任せる。AIの得意な『調べることと、考えること』は、WinActorでも組めなくはありませんが、開発に手間やコストがかかってしまいます」
また安齋氏は、数あるRPAの中で、なぜWinActorが優れているのかということについて、次のように話します。
「WinActorは、部品が細かく分かれているところが一番のメリットです。人が直感的に業務に対する部品を組み込んで、設定も簡単にできます。国産なので、サポート面でも安心です」
RPAツールの中には、ITやプログラムの知識がなければ扱えないものや、ライセンス費用が安くても、部品が足りないものもあります。WinActorは、部品が豊富でさまざまな業務に対応可能なので、同社のように情報源が5つに分かれていても容易に業務を自動化できます。
複数のWinActorのシナリオを束ねてクラウドで集中管理するSaaS運用ツール「WinActor Manager on Cloud(WMC)」を利用することで、MCPサーバーを介して多様なAIエージェント(LLM)と連携できます。

WMCによるAIエージェントとの連携
これによりブレイン・ゲートプラスでは、WinActorとAIエージェント「JAPAN AI」を連携させました。以下が、業務フローです。
最初に、営業担当者がAIエージェントのチャット画面に企業名を入力します。すると、AIがMCPを経由してWMCに稼働させるシナリオを指示します。WMCが5つのシナリオを順に実行し、WinActorが営業管理ツールや販売管理システム、課題管理システムなどからデータを取得してGoogleドライブに保存し、そのパスをMCP経由でAIに返します。
設計にあたっては、ブレイン・ゲートプラスのRPAやAIに関するノウハウがいかんなく発揮されました。それぞれの情報源やシステムの仕様に応じて、システムへのアクセスから必要なデータの抽出・保存までを担う複数のWinActorシナリオを、AIエージェントからの呼び出しを前提に、処理速度や入出力パラメータまで踏まえて設計・構築。WMC上で各シナリオを適切に連携・制御できる仕組みを構築することで、AIエージェントからの指示に確実に応答できるRPAフローを実現しました。
これと並行して、AI側では対象企業のWebリサーチを進めます。コーポレートサイトの新着ニュースやプレスリリースサイトなどの関連ニュースを調査し、社内から集めたデータと掛け合わせてレポートを作成。完成するとチャット画面にダウンロードリンクが表示され、担当者が受け取ります。

今回同社が構築した仕組みでは、AIエージェントによって、社内用と顧客用の2種類のレポートが出力できます。社内用は、営業担当が訪問前に情報をインプットするための資料、顧客用は訪問時に見せるコミュニケーション用資料です。
社内向けのレポートでは、これまでの顧客対応履歴を、取り組み年数やライセンス数のグラフで自動生成し、年間の取引規模の推移が並びます。契約更新予定については今後12カ月分を月別に記載し、更新担当の部署も明示します。さらに、直近のやり取りを示すコミュニケーション状況、誰と何回接触したかがわかるサポート利用状況が続きます。
加えて、以前の訪問で聴いていた顧客課題や要望は、どのような相談があったかをAIが集約。さらにフォロー情報、同業界のDX事例、企業情報と直近ニュースまでが1つのレポートにまとまります。

レポートのサンプル
特筆すべきは、次の訪問で何を聞くかをアドバイスしてくれる「ヒアリング項目」が表示されることです。
「営業担当者は多くの案件を同時にかかえており、個々の顧客に対して何を聞けばいいかをピンポイントで言語化するのは難しい面があります。そこをAIが支援して、次の営業シーンで提案するべき内容を予測して、『ここだけは聞こう』というリストにまとめます」と安齋氏は説明します。
一方の顧客用のレポートは、編集可能なスライド形式で出力されます。内容は社内向けのものから必要な情報をピックアップしたものですが、言葉づかいなどには気を配っています。
社内用と顧客用の2種類のレポートが揃うまでの時間は約20分です。
「これは人力では作れません。本格的な運用はこれからですが、営業の現場からは『十分すぎる』という声があがっています」と、髙橋氏は自信をのぞかせます。
さらに今後、稼働させるシナリオを増やすことも検討しています。多様なデータを集めることで、分析・予測といったAIが得意な使い方が広がり、マーケティングでの活用が期待できます。
同社では、WinActorとAIエージェントとを組み合わせた仕組みを、自社の顧客へも広く提案していく計画です。
安齋氏「『AIエージェントを使い始めたからRPAは不要』という考えは、誤りだと考えています。WinActorで作ってきた業務シナリオは大きな財産です。それを生かしながらAIエージェントと連携すればいいのです。WMCによって、その橋渡しができるようになりました」
WMCによって、WinActorの可能性がいっそう大きく広がったと言えるでしょう。
法人名:株式会社ブレイン・ゲートプラス
所在地:名古屋市中村区名駅四丁目22-22 名駅KMビル8F
創業:2023年3月
事業概要:WinActorをはじめとするRPA製品の販売・導入支援を軸に、企業の業務自動化を支援しています。近年は法人向け生成AIプラットフォームの提供やAI研修、AI活用コンサルティングへと領域を広げ、AIとWinActorを連動させたソリューションの提案に力を入れています。自社を実証の場としながら、お客様の業務に合わせた自動化の形を提案し続けます。
URL:https://braingate-plus.co.jp/
DX事業部 事業部長 髙橋俊彦 氏
DX事業部 技術開発部長 安齋勝雄 氏
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